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高配当銘柄の長期信用買い戦略、維持費は相殺できるか?

高配当銘柄の長期信用買い戦略、維持費は相殺できるか? published on

一般に、長期投資に向かないと言われる信用取引ですが、ふと「配当落調整金で維持費を相殺できないか?」と考えました。
そこで長期信用買いの可能性を探るため、損益分岐について試算してみました。

長期信用買い戦略とは

概要

長期信用買いは以下のいずれか、もしくは双方を目的とした戦略です。

  • 購入時点の株価よりも高くなるまで持ち続ける
  • 配当落調整金と維持費の差額を継続的に得る

後者については、配当金と維持費の裁定取引とも言えます。

メリットは現在保持している有価証券を担保(保証金)として活用できることです。
ただしあくまでも信用取引ですので、現物とは違ったリスク管理が必要となります。

前提条件

長期信用買いの戦略は以下の条件を満たすことを前提としています。

  1. 配当金が下がらないこと
  2. 十分な保証金を維持できること(株価が下がっても問題ないこと)
  3. 長期的にその企業が上場し続けること

1.や3.は外部的な要因ですので保証はできません。
特に1.を満たさなくなる可能性は低くありませんので、銘柄選びには特に注意が必要です。

損益

以下の計算式が長期信用買いにおける年間損益となります。

年間損益 = 配当落調整金 – 金利 – 名義書換料 – 管理費 (+ 逆日歩)

信用取引としての総合的な損益は上記の他に、売却時の価格損益や購入・売却時の手数料を考慮したものとなります。

 

信用買いの利益

配当落調整金

配当金の84.685%が配当落調整金となります。
配当落調整金では住民税が計算されないので、通常の配当に比べて5%多くなります。

逆日歩

逆日歩は信用売残が多くなると発生することがありますが、安定した収入源としては期待できません。
付いたらラッキーくらいに考えておくべきでしょう。

 

信用買いの維持費

金利

今回特に重要なのは一般信用買金利ですが、金利は証券会社によって異なります。
いくつかの証券会社について、2016年12月時点の金利をまとめました。

証券会社 制度信用買 金利 一般信用買 金利
むさし証券 1.35% 2.35%
GMOクリック証券 2.10% 3.50%
SBI証券 2.80% 3.09%
SMBC日興証券 2.50% 2.50%

調べた中では最も安いのはむさし証券のようで、制度信用買、一般信用買ともに低い金利でした。

名義書換料

多くの証券会社が類似した料金体系を取っていますが、SBI証券では以下のようになっています。

売買単位あたり50円(税込54円)が必要となります。
ETF/ETNについては、売買単位あたり5円(税込5.4円)となります。

※権利確定日をまたいで買建玉を保有した場合に発生します。

※権利処理等手数料(名義書換料)に上限金額はありません。1売買単位(1単元)あたりの投資金額が小額の銘柄を買建していた場合、名義書換手数料が投資金額に対し多額となる場合があります。

SBI証券 信用取引のサービス概要 その他の費用

以上に基づき計算した早見表が、以下の場所にまとめてあります。
信用取引 年間の名義書換料早見表

名義書換料には以下の特徴があります。

  • 売買単位が100株よりも1,000株の方が割安になる
  • 株価が安い銘柄を大量に買うよりも、株価が高い銘柄を少量買った方が抑えられる
  • 定款で定められている配当回数が少ない銘柄の方が抑えられる

管理費

多くの証券会社が類似した料金体系を取っていますが、SBI証券では以下のようになっています。

建玉に対する管理費は、新規約定日より1ヵ月目ごとの応当日を経過する都度、1株につき10銭(税込10.8銭)の割合で発生いたします。
管理費は最低100円(税込108円)、最高1,000円(税込1,080円)となります。また、取引所等が定める売買単位が1株である銘柄については1株につき100円(税込108円)になります。

SBI証券 信用取引のサービス概要 その他の費用

以上に基づき計算した早見表が、以下の場所にまとめてあります。
信用取引 管理費早見表

管理費には以下のような特徴があります。

  • 単元株制度の銘柄の場合:1,000株までは割高、10,000株より多いと割安
  • 単元株制度でない銘柄の場合:10株より多いと割安

なお、売買単位が1株の銘柄はREITやETF、[8421] 信金中央金庫などが当てはまると思われます。

 

長期信用買いの試算

年間の損益分岐

長期信用買いでは、年間損益がプラスかマイナスかが重要となります。
そのため、年間損益を以下のように変形します。

年間損益 = 購入時株価×(配当落調整金利回り – 金利年率 – 年率換算経費) + 逆日歩

こうすることで、配当落調整金利回り>金利年率 + 年率換算諸経費であれば年間損益がプラスを見込めるようになります。

配当落調整金利回り

配当利回りから、以下の表で換算できます。

配当利回り 配当落調整金利回り
2.5% 2.12%
3.0% 2.54%
3.5% 2.96%
4.0% 3.39%
4.5% 3.81%
5.0% 4.23%

最も金利の安いむさし証券でも2.35%でしたので、最低でも配当利回り3.0%以上は必要になりそうです。

年率換算経費

年率換算経費とは名義書換料と管理費をまとめ、購入時株価に基づき年間の利率に計算し直したものです。
年間経費および年率換算経費の早見表は、以下の場所にまとめてあります。
信用取引 年間経費(管理費+名義書換料)早見表
信用取引 年率換算経費(管理費+名義書換料)早見表

予算別試算

最後に、運用予算ごとに年率換算経費を計算し、損益がプラスになりそうか見ていきます。
なお、年率換算経費の幅は権利日の回数によるものです。

運用予算10万円の場合

運用予算10万円の場合は以下のようになります。

売買単位 購入単価 購入株数 年率換算経費
100株 100円 1,000株 1.84%~3.46%
100株 1,000円 100株 1.35%~1.51%
1,000株 100円 1,000株 1.35%~1.51%
1株 100円 1,000株 18.36%~77.76%
1株 1,000円 100株 13.50%~19.44%
1株 10,000円 10株 2.60%~2.72%
1株 100,000円 1株 1.30%~1.36%

これを見ると、橙色の部分が最も低い水準です。
これに加えて金利2.35%(むさし証券の場合)が必要となりますので、配当利回り4.5%でほぼプラマイゼロとなります。
ちょっと厳しそうですね。

運用予算100万円の場合

運用予算100万円の場合は以下のようになります。

売買単位 購入単価 購入株数 年率換算経費
100株 100円 10,000株 1.35%~1.51%
100株 1,000円 1,000株 0.18%~0.35%
100株 10,000円 100株 0.14%~0.15%
1,000株 100円 10,000株 1.35%~1.51%
1,000株 1,000円 1,000株 0.14%~0.15%
1株 100円 10,000株 6.70%~66.10%
1株 1,000円 1,000株 1.84%~7.78%
1株 10,000円 100株 1.35%~1.94%
1株 100,000円 10株 1.30%~1.36%
1株 1,000,000円 1株 0.13%~0.14%

赤字部分は0.13%~0.15%程度と、ほぼ無視できるような水準となっています。
金利2.35%とすると、配当利回りが3.0%以上であれば金利と経費をほぼ相殺できることになります。

運用予算1,000万円の場合

運用予算1,000万円の場合は以下のようになります。

売買単位 購入単価 購入株数 年率換算経費
100株 100円 100,000株 0.67%~2.29%
100株 1,000円 10,000株 0.18%~0.35%
100株 10,000円 1,000株 0.02%~0.03%
1,000株 100円 100,000株 0.18%~0.35%
1,000株 1,000円 10,000株 0.14%~0.15%
1,000株 10,000円 1,000株 0.01%~0.02%
1株 100円 100,000株 5.53%~64.93%
1株 1,000円 10,000株 0.67%~6.61%
1株 10,000円 1,000株 0.18%~0.78%
1株 100,000円 100株 0.14%~0.19%
1株 1,000,000円 10株 0.13%~0.14%

100万円のときよりも更に全体的な年率換算経費が下がっています。
特に赤字部分は0.01%~0.02%程度と誤差のような水準で、金利2.35%とすると配当利回りが3.0%でも損益がプラスになります。

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まとめ

2016年12月現在、金利が最も安い証券会社でも2.35%で、これを配当落調整金で相殺するためには最低でも配当利回り3.0%以上が目安となることが分かりました。
現在の株高の状況では配当利回りが低下しているため、これだけでも銘柄はかなり限られそうです。

また、信用取引の経費(名義書換料、管理費)を年利換算した所、購入単価が高ければ高いほど経費の比率が低くなり、配当落調整金で相殺しやすくなることが分かりました。
ただし購入単価が高いほど値下がりリスクも高まるため、損益分岐点と値下がりリスクとのトレードオフになる点には注意が必要です。

個人的な印象としては、何らかの要因で大きく値下がりした高利回りの銘柄について、長期的に業績が問題なさそうと見込めれば、長期信用買いのチャンスがあると思います。


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