Skip to content

[2492] インフォマート:企業間電子商取引のプラットフォーマー

   

インフォマートは私がここ数年注目している銘柄の一つです。
今回はインフォマートのビジネスモデルとその強みを中心に分析しました。

BtoB向け取引プラットフォームの強み

インフォマートは受発注、請求書、規格書、商談などのBtoB取引に関するプラットフォームを展開しています。
このビジネスモデルは非常に強力で、以下のような特長があります。

BtoB向けストックビジネスの安定性

月額システム利用料を得られるストックビジネスであるため、安定した業績が見込めます。
またBtoB向けなので、BtoCに比べると情勢が急激に変化する可能性も低いと言えるでしょう。
収益性も非常に高く、ここ数年の営業利益率は30%~40%の間で推移しています。
直近の2016年12月期では売上高61.5億円、営業利益19.6億円、営業利益率は31.8%となっています。

取引プラットフォームの競争優位性

取引プラットフォームは、プラットフォームビジネスの中でも特に優位性が高いと考えられます。
なぜなら、業者間で同一のプラットフォームが使われていなければ取引ができないためです。
そのため利用料や使い勝手などの事情も考慮すると、ユーザはもっとも広く使われているプラットフォームを選択することになります。
したがって、先行して既にシェアを獲得しているプラットフォームが圧倒的に有利ということになります。

この優位性について身近な例を挙げるとすれば、日本におけるLINEでしょうか。
仮にLINEよりも使いやすい類似したアプリがあったとしても、LINEの優位性は揺るぎません。
それは「多数の人がLINEを使っている」という事実がユーザを繋ぎ止めているからです。
LINEはコミュニケーションツールであり、多数の人が使っていなければ意味がないため、コミュニケーションアプリのプラットフォームとして圧倒的な立場にあるのです。
 

各プラットフォームの特長

それでは、インフォマートの主力製品となっている3つのプラットフォームについて見てみます。

BtoBプラットフォーム 受発注

受発注はフード業界をターゲットにしており、FAXなどによって行われていた受発注を電子化することで、業務効率化やトラブルの未然防止を実現するものです。
これまでにアルバイトなどのスタッフが店頭で行っていた業務が効率化されることで人件費を削減できるため、飲食店から月額利用料を貰ってもWin-Winとなる関係が成立しています。
その上、買い手と売り手をマッチングさせる場を提供するプラットフォームビジネスであり、買い手(飲食店)を集めれば自然と売り手が集まってくるという点も秀逸なビジネスモデルであるといえます。
受発注こそがインフォマートの本業であり、稼ぎ頭と言っても良いでしょう。

2016年12月期の受発注の営業利益率は53.2%という驚異的な高さとなっています。
平成28年12月期 第4四半期・通期決算説明資料によると、2016年度のフード業界における利用企業数は4万社でシステム取引高は1.3兆円(外食シェアの18%)となっていますが、2018年度までに利用企業数5万社でシステム取引高2兆円(外食シェアの30%)を目指すことが中期経営方針となっています。
なお、競合他社・サービスとしては[3814] アルファクス・フード・システムがありますが、こちらの会社はあまり業績がよくないようです。

BtoBプラットフォーム 規格書

規格書はフード業界をターゲットにしており、食の安全・安心に必要な商品規格書を電子化するものです。
受発注と規格書は「食の安心・安全 受発注」というパッケージとしてフード業界でのシェア拡大を目指す戦略のようです。
一般人にとってはいまいち実感が湧きにくいものですが、受発注に次ぐ利益となっています。
2016年12月期の規格書の営業利益率は26.5%となっており、受発注には及ばないものの十分高い利益率を実現しています。

競合他社・サービスの一つとして[3835] eBaseが挙げられ、この会社は食品業界向けに安全やトレーサビリティに関するシステムを扱っています。
インフォマートがeBaseから訴訟を起こされたのも、競合他社であるためでしょう。
なお、訴訟については虚偽の事実を元に訴訟されたと判断し、インフォマートがeBaseを反訴するに至っています。

BtoBプラットフォーム 請求書

請求書は一般企業をターゲットにしており、請求書の受け渡しをIT化することで、業務効率化を実現するものです。
紙の請求書に比べれば印刷・郵送・保管、またそれらにかかる作業が必要なくなるため、大きなコスト削減を実現できます。

公式サイトを見ると大手企業にも使われていますし、会計システムや販売管理システムとも広く連携実績があるようです。
2016年9月にはメガバンクの入金データを自動的に取り込む連携機能の提供を開始した他、2017年5月には利用企業数が14万社を突破したことも発表されました。
ただし請求書はセグメントで見ると、黒字化できていないようです。
請求書は飲食店向けの受発注に比べると参入障壁が低いと考えられるため、今後もどれだけ普及させられるかがカギとなるでしょう。
 

EDIに対するインフォマートの優位性

請求書といえばEDI(Electronic Data Exchange)と呼ばれる電子データ交換の規格が有名ですが、インフォマートの優位性はあるのでしょうか?
これについては2016年12月期の株主総会の質疑応答において質問があり、「EDIは電子帳簿保存法に対応していないが、インフォマートは対応していることが大きな強み」と回答されていました。
公式サイトの以下のページにおいても、請求書電子化の効果の一つとして電子帳簿保存法の適用条件を満たしていることが明記されています。
電子請求によるペーパーレス化(全3回) 第3回 請求書電子化の効果

また2017年5月22日には、花王や日本情報通信との実証実験について以下のニュースリリースがありました。
花王、日本情報通信、インフォマートの3社で業務品の卸・小売業界における共通EDI連携の実証検証を開始
このニュースリリースによればインフォマートはEDIと競合するというよりも、連携することで更に使い勝手を高められるという考えのようです。
実証実験の結果はまだ分かりませんが、効果があると分かれば更なる普及が見込まれそうです。
 

創業社長を失ったことが最大の懸念

インフォマートの創業社長である村上勝照氏は、2017年3月27日に51歳という若さでお亡くなりになりました。
私はその2日前には株主総会で元気な姿を見ていたため、非常にショックでした。
51歳という若さですので、まだ前線を引くつもりはなかったでしょう。
今後どのような戦略を考えていたのか、そのビジョンが他の経営陣とどれだけ共有されていたのかが気になります。
しばらくは社内での混乱が続くかもしれませんが、創業社長がいなくなったことによる派閥争いのようなことだけは起こらないでほしいです。
 

まとめ

今回はインフォマートのビジネスモデルと主力製品について分析しました。
インフォマートのビジネスモデルはストックビジネスであると同時にBtoB向けのプラットフォームビジネスであり、収益性・安定性共に非常に強力であると考えられます。
また、主力製品についてはフード業界向けの受発注と規格書が主力となっており、今後も拡大が見込まれています。
請求書については黒字化に至っていませんが、EDIに比べて優位性もあり、早急にシェアを拡大できれば可能性はあるものと考えられます。
創業社長が亡くなられたことは非常に残念ですが、今後に期待しています。

関連記事

  1. [8410] セブン銀行:ATMのプラットフォームビジネス
  2. 日本のIT業界における、将来性のありそうな銘柄
  3. コンビニをとりまく2つのプラットフォーム構造
  4. 小売店に見るプラットフォームビジネス
  5. 株式投資のためのプラットフォームビジネス概論
  6. フロービジネスとストックビジネスの特徴に見る投資戦略
  7. [8252] 丸井グループ:カード事業が主力の小売業