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小売店に見るプラットフォームビジネス

   

小売店は昔からある業態ですが、そのビジネスモデルを分析してみるとスーパーマーケットなどはプラットフォーム型のビジネスモデルとなっています。
今回はプラットフォームビジネスという観点で小売店を分析しました。

プラットフォームビジネスとしての小売店

様々な商品を並べ、競争させるほど価値が生まれる

スーパーマーケット、家電量販店、ドラッグストアといった小売店では様々なメーカーの商品が店頭に並んでいます。
これは小売店として珍しくない光景ですが、小売店は各メーカーの商品を競争させているという見方もできます。
まさにプラットフォームビジネスの定義、「多くのプレイヤーを巻き込み、競争させること」に当てはまります。
実際、品揃えが豊富な小売店は、来店者にとっても魅力的ですよね。

売上データを活かした内製化(プライベートブランド商品の開発)

主にスーパーマーケットやドラッグストアでは売上データを基に、メーカーとプライベートブランド商品を企画・開発し、販売しています。
プライベートブランド商品は競合商品に比べて販売価格が安いだけでなく、小売店にとって利益率が高い商品です。
売上データに基づいて売れ行きのよい商品をプライベートブランドに置き換え、利益を拡大するという戦略はプラットフォームビジネスそのものです。

大手小売店による一人勝ちが発生する

大手小売店は影響力が強いため、メーカーとの交渉を有利に進めることで仕入れ価格を抑えることができます。
その結果、他社よりも安い価格で販売することが可能となり、消費者にとって選ばれやすい店舗となります。
 

かつて猛威を振るったプラットフォームの小売店

今となっては当たり前の存在ですが、歴史を振り返ればスーパーマーケットや家電量販店、百貨店などは大きな影響力を持っていました。
しかし最近のWebサービスに多いプラットフォームビジネスと比較すると見劣りしてしまいます。
これにはおそらく2つの理由があると考えられます。

市場が既に成熟している

一つは市場が既に成熟してしまっていることです。
スーパーマーケットなどの業態が登場したのは数十年前で、既に十分普及しています。
市場は既に成熟して市場規模が拡大しておらず、競合他社も多く存在する状態のため、勢いを感じられないのだと思います。

物理的な距離・空間の制約による限界

もう一つは物理的な制約によるもので、おそらくこちらの方が要因としては大きいでしょう。
小売店を利用するのは、基本的に近隣の人に限られます。
仮にどんなに低価格の小売店があったとしても、移動には費用も時間もかかるため、実際に購入するのは近隣の人だけに限られます。
これは物理的な制約が存在することで、プラットフォームを利用するプレイヤー(消費者)が限られてしまうということを意味します。
大手チェーン店であれば様々な場所に出店することもできますが、これは類似するプラットフォームを複数運営しているようなものです。
これではプラットフォームの大きな価値向上には繋がりません。
また、店舗のスペースを広くすれば品揃えを良くすることができますが、それにもやはり物理的な限界があります。
あまりにも広すぎる店舗は消費者にとっても使いにくくなってしまうでしょう。
このように小売店は物理的な制約からプレイヤー(消費者)が限られてしまうため、Webサービスなどのプラットフォームビジネスに比べると見劣りするのだと考えられます。
プラットフォームビジネスの特徴の一つに「多くのプレイヤーを巻き込むほど優位性が高まる」というものがありますが、多くのプレイヤーを巻き込むことがいかに重要なファクターかが伺えます。
 

物理的な制約を克服したネット通販

物理的な距離・空間の制約という弱点を克服できたのが、Amazonを代表とするネット通販といえるでしょう。
ネット通販では全国の消費者を顧客にできますし、運営する店舗はWebサイト一つで済みます。
品揃えを増やしても、容易に検索できれば消費者の使い勝手を下げることもありません。
ネット通販は実店舗に比べて「レジ打ちや商品陳列などが必要なく、人件費がかからないから価格競争力が高い」と言われます。
もちろんこれは正しく、実店舗に比べて競争力が高い理由の一つです。
しかしプラットフォームビジネスという観点から見ると、ネット通販の一番のメリットは「物理的な距離・空間の制約の克服」であり、これが成功の主要因であると考えられます。
 

まとめ

今回はプラットフォームビジネスという視点から、小売店を分析しました。
スーパーマーケットなどの小売店はプラットフォームビジネスとして大きな影響力を持っていました。
しかし市場の成熟や物理的な距離・空間の制限があるため、Webを活用したプラットフォームビジネスに比べるとその勢いは限定的です。
ネット通販を「元々強力なプラットフォームビジネスである小売店の弱点を克服したもの」と見れば、ネット通販の成功は必然だったとも言えるのではないでしょうか。

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