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巨大な顧客基盤を持つ、鉄道会社のビジネスモデル

巨大な顧客基盤を持つ、鉄道会社のビジネスモデル published on

インフラとして毎日の生活に密着している鉄道会社。
今回は鉄道会社がどのように利益を上げているか、そのビジネスモデルについて分析しました。

鉄道事業:在来線・ローカル線

鉄道会社の本業として、在来線・ローカル線があります。
在来線・ローカル線の事業単独での収益性はあまり高くありませんが、後述の新幹線・特急や不動産開発の事業を併せ持つことで、相乗効果が発揮される事業です。

JR北海道の赤字路線が問題としてニュースにもよく取り上げられますが、特にJRは元々国鉄だったこともあり、収益化がほぼ不可能な路線も多くあることでしょう。
JR東日本([9020]東日本旅客鉄道)は在来線だけでも黒字化できていると言われますが、これはむしろ東京の一極集中によって実現されており、JRの中でも特殊だと言えるでしょう。

 

鉄道事業:新幹線・特急

鉄道会社の本業として大きな収益源となるのが新幹線・特急です。
主要都市間を新幹線・特急で接続することで、まとまった旅客を長距離・短時間で輸送できるため、高い収益性となります。
なお、主要都市へ集客するのは在来線の役割ですので、新幹線・特急の収益に貢献していることになります。
そのため、在来線・ローカル線単独では低収益や赤字であっても、新幹線・特急の収益を考慮する必要があります。

この分野に特化しているのがJR東海([9022]東海旅客鉄道)です。
JR東海の収益源は極端に偏っており、在来線の大半が赤字である一方、新幹線で莫大な収益を上げています。
このことを考えれば、JR東海が新幹線の利便性を重視する一方で、在来線や不動産、金融などが二の次になっているのも納得がいきます。
今後、JR東海はリニアの開発に注力していくことになるため、この方針は変わらないでしょう。

一方、JR北海道は新幹線の保守費用などにより大幅な赤字になっています。
ビジネスモデルしての収益性が高くても、需要のないところでは事業として成立しないということですね。

 

鉄道事業:貨物輸送

貨物輸送も鉄道会社の本業の一つです。
しかし、現在貨物輸送を行っている鉄道会社は非常に少なく、大半の貨物はJR(日本貨物鉄道)によって輸送されています。
これは全国で繋がっているJR各社の線路を借りることで、効率的な長距離輸送ができる強みがあるためでしょう。
ただし日本貨物鉄道は非上場であり、収益性も極めて高いというわけではないようです。

将来的に大きな収益性拡大が見込めるわけでもありませんが、長距離輸送においては他の輸送手段と比較して優位性があります。
自動運転が全面的に普及しない限りは、今後も一定の地位を保っていくでしょう。

 

駅ナカ、不動産開発

鉄道会社にとって準本業とも言えるのが、駅ナカや駅周辺の不動産開発です。
駅ナカは毎日通勤で利用する人が顧客基盤となるため、安定した収益が見込めます。
また、主要都市の駅周辺を開発することで魅力が生まれ、在来線・ローカル線や新幹線・特急の収益にも大きく貢献します。
旅客輸送と不動産開発は極めて相性がよいため、特に特急路線を持たない鉄道会社の多くは不動産開発も手がけています。
鉄道会社の名前を持つ○○百貨店や○○ホテルが多いのはこれが理由ですね。

JR東日本([9020]東日本旅客鉄道)はこの分野にも力を入れており、アトレやルミネといった駅周辺を開発する連結子会社を持っています。
また東急グループ([9005]東京急行電鉄、[3289]東急不動産ホールディングス)も109やヒカリエ、東急ハンズ、東急百貨店、東急エクセルホテルなど、かなりの存在感があります。
JR九州([9142]九州旅客鉄道)も大分駅のおおいたシティを開発するなどこの分野に力を入れており、大きな収益源の一つとなっています。

 

金融・決済サービス

多角化として金融・決済サービスに進出する企業は多く存在しますが、鉄道会社もその一つです。
元々は自動改札機のメンテナンスコストを抑え、利便性向上や効率化のために導入された交通系ICでしたが、一つの決済手段として普及させることで決済手数料を得ています。
駅ナカだけでなく街中やインターネットなど、交通系ICが利用可能な場面は日々拡大しており、今後も鉄道会社の収益源の一つとなっていくでしょう。
また、鉄道会社の多くは自社・他社と提携してクレジットカードを発行しており、高額な定期券購入をきっかけにカードを保有してもらったり、交通系ICのオートチャージに対応させたりしています。

鉄道会社の中でも、ここに最も力を入れているのはJR東日本([9020]東日本旅客鉄道)です。
JR東日本はクレジットカード(ビューカード)を発行しており、連結子会社のルミネもマルイと同様のビジネスモデルでクレジットカードを積極的に売り込んでいます。(参考:[8252] 丸井グループ:カード事業が主力の小売業
また全国各地で様々な交通系ICが乱立していますが、中でもSuicaはおサイフケータイとしてモバイルSuicaが利用できたり、最近ではApple PayでもSuicaが利用できるようになりました。

ちなみにJR九州([9142]九州旅客鉄道)はマルイと提携することでJQカードを展開しています。
これはカード事業のノウハウを必要とするJR九州と、九州へ進出するマルイとで利害関係が一致し、提携したものと考えられます。

 

旅行代理店

旅行代理店も鉄道会社の事業の一つで、この事業は少しでも新幹線を多く利用してもらうことが目的です。
新幹線は大きな運用コストがかかるため、「空気輸送をするくらいなら、少し割引してでも乗ってもらいたい」と考えています。
そのため、新幹線とホテルをパックにして販売したり、ツアーの中に新幹線での移動を組み込んで販売しています。

通常、新幹線は需要によらず一律料金となっていますが、旅行代理店は新幹線の需給調整の役割も担っています。
例えばJR東海ツアーズは「ぷらっとこだま」として、あまり利用されない列車を割安料金で販売しています。
他にもJR東海ツアーズや日本旅行は東京から名古屋/京都/大阪へ新幹線で日帰り旅行するプランがあり、乗車できる列車の時間帯を限定することで、新幹線「のぞみ」を割安に利用できるようになっています。

旅行代理店は連結子会社となっているケースが多いです。
JR東海ツアーズはJR東海([9022]東海旅客鉄道)の連結子会社となっています。
また、びゅうトラベルサービスはJR東日本([9020]東日本旅客鉄道)ですし、日本旅行はJR西日本([9021]西日本旅客鉄道)の連結子会社となっています。

 

まとめ

鉄道会社のビジネスモデルは「収益性の高い新幹線・特急」と、「巨大な顧客基盤」の2つが大きな特徴であることがわかりました。
不動産や金融サービスは鉄道事業の巨大な顧客基盤を活かしたビジネスモデルとなっており、そもそも鉄道事業は参入障壁があるため圧倒的な優位性・差別化のポイントとなっています。
したがって鉄道が安定的に利用される地域においては、今後も安定的な収益が見込まれるでしょう。

また旅行代理店は新幹線の販促や需給調整を行うことで、少しでも新幹線の収益性を高めようとしていることが分かりました。
新幹線の中でもJR東海の東海道新幹線の収益性は興味深いものがあるので、また折を見て調べてみたいと思います。


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