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「ブラック企業」というビジネスモデルとその問題点

「ブラック企業」というビジネスモデルとその問題点 published on

近年、ブラック企業が問題となりつつあります。
問題としては以前から存在したものの、ようやく問題として表面化し始めた、と言ったところでしょうか。
今回はブラック企業を「ビジネスモデル」という観点で捉え、社会や経済的にどのような問題があるのか、考えてみました。

ブラック企業の定義

ブラック企業という言葉は元々ネットスラングでしたが、社会一般で受け入れられるようになりました。
一方でブラック企業という言葉自体がバズワードになりつつあり、なんでもかんでもブラック企業にされがちですが、Wikipediaでは以下のように定義されています。

広義としては暴力団などの反社会的団体との繋がりを持つなど違法行為を常態化させた会社を指し、狭義には新興産業において若者を大量に採用し、過重労働・違法労働によって使いつぶし、次々と離職に追い込む成長大企業を指す。

ブラック企業 – Wikipedia

本記事ではWikipediaの狭義に近い、「従業員に対して十分な対価を払わずに酷使し、使い捨てる企業」をブラック企業の定義とします。

 

ブラック企業のビジネスモデル

「従業員に対して十分な対価を払わずに酷使し、使い捨てる企業」をブラック企業の定義としました。
ブラック企業のビジネスモデルは非常にシンプルで、既存のビジネスにおいて従業員への給与を減らしたり、サービス残業を行わせるだけです。
人件費を減らすことができればその分でコスト競争を仕掛けたり、利益を上乗せすることができます。

このビジネスモデルの特徴は、経営努力の必要がないことです。
したがって、経営者の実力(と倫理観)のない企業ほど積極的に採用されていると考えられます。
ただし優秀な人材の獲得競争が激しい業界においては優先的に待遇や労働環境が整備されるため、採用しづらいでしょう。

 

ブラック企業のビジネスモデルの問題点

資本主義の観点から見れば、人件費を抑えて高収益を上げるブラック企業は優れた企業と言えます。
特に損益決算や財務だけを見る経営者や投資家がいたとすれば、極めて優れたビジネスモデルであると言わざるを得ません。
ブラック企業の問題点には倫理的な問題、社会的責任(CSR)、違法なサービス残業などが挙げられるのはもちろんですが、今回はビジネス的な観点での問題点を考えてみます。

問題点1:生産性の低いビジネスの存続

サービス残業の常態化しているブラック企業には生産性や収益性の低い企業が多く見られますが、これが存続してしまうこと自体が問題となります。
なぜなら、生産性の低い会社や赤字の会社は淘汰され、生産性の高い会社が生き残るのが資本主義経済のあるべき姿だからです。
生産性の低い会社の存続を許すということは社会全体の成長、すなわちGDPの低成長に繋がってしまうのです。

サービス残業などに対して一部の経営者は「まともに給料を払ったら潰れてしまう」と言いますが、そもそもそれがおかしいのです。
給料をまともに払ったら潰れてしまうというのは、既に経営やビジネスモデルが破綻していることを意味します。
これに対し「会社が潰れたら従業員も困るだろう?」と開き直った意見を言う人もいますが、会社が潰れたら従業員は他の会社へ移るだけです。
同じ従業員であっても、できるだけ生産性の高い会社で働いた方が社会全体としてはプラスになります。

本来、労働者は劣悪な労働環境に耐えるのではなく、容易に転職できるようにあるべきでしょう。
転職が容易であれば企業は人材を奪い合い、囲い込むようになり、できるだけ良好な職場環境を提供するように努めるはずです。
この問題の背景には日本の雇用の流動性が低いことがあり、さらにその背景には終身雇用という法律がマイナスとして働いていることがあります。
しかしだからと言って、サービス残業などをさせてよい理由にはなりません。

問題点2:人材を使い潰すことによる社会的損失

ブラック企業の中には人を使い潰すことによって高い利益を出している会社もありますが、やはりこちらにも問題点があります。
それは、これまで人を育てるのにかかった養育費や税金を間接的に搾取しているという点です。

人を育てるのには、膨大なお金と時間がかかります。
地域や進学状況にもよりますが、お金だけで見ても最低1,000万円はかかるでしょうし、大学院や私立大学などまで考えれば2,000万円~3,000万円かかってもおかしくないでしょう。
また義務教育や医療のように税金で負担が抑えられている部分も多く、実際にはもっと多くのお金がかかっています。
これらのお金や時間はコストとも言えますが、むしろ将来に向けた人材への投資と捉えるべきでしょう。
教育や医療に税金が使われているのも、将来を担う人材へ投資するためなのです。

このような背景を考慮すると、企業は人を育てるのにかかったお金や時間以上の価値を生み出すべきであり、ブラック企業の行いは反社会的行為です。
例えば3,000万円かけて育てられた人を使い潰して、ブラック企業が数年間3,000万円の利益を得たとしたらどうでしょうか?
生涯賃金が2億円である人材は生涯に4億円ほどの価値が生み出せることを考えれば、本来はもっと長期的に社会へ価値を提供できたはずです。
こういった点を考えるとブラック企業のビジネスモデルは、社会的に大きな損失をもたらしていると言えます。

 

まとめ

今回はブラック企業のビジネスモデルについて考察しました。
ブラック企業とはこれまでに社会が投資して育て上げた人を使い潰すことにより、間接的に養育費や税金を搾取するだけでなく、長期的に生み出せる人材を毀損させる存在であることが分かりました。
また、ブラック企業には生産性や収益性の低い会社も多く、それらの存続を許すということは資本主義経済においてマイナスに働くことが分かりました。
以上のような理由から、ブラック企業は倫理的な面だけでなく、経済的な側面から見ても決して許される存在ではないことが分かりました。

私は、明らかなブラック企業であると感じる企業には投資しません。
これは投資家としてのポリシーであると同時に、義務でもあると考えています。


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