Skip to content

[8410] セブン銀行:ATMのプラットフォームビジネス

   

セブン銀行は銀行業でありながら、独自のビジネスモデルで知られています。
今回はセブン銀行のビジネスモデルの特徴について分析しました。

ATMをプラットフォーム化したビジネスモデル

セブン銀行の最大の特徴は、ATMの利用手数料を収益のメインとするビジネスモデルにあります。
一般的な銀行では預金によってお金を集め、それを高い利回りで運用することによって利益を生み出しています。
これらの銀行においてATMはサービスを提供するために必要なものですが、それ自体が収益を生み出すものではありません。
したがって銀行側としてはできるだけATMの運用コストを抑えるために、他の銀行とATMの提携を行っています。
このような背景の下、セブン銀行は多数の銀行と提携することで、ATM利用時に提携先の銀行から得られる手数料から利益を得ています。

セブン銀行のビジネスモデルはプラットフォームビジネスの構造となっており、ここでプラットフォームとなっているのはATMです。
そもそもコンビニ自体が極めて利便性の高いプラットフォームとなっていますが、その中にATMを設置し、数多くの銀行と提携することで圧倒的な利便性を実現しています。
セブン銀行は消費者がどの銀行を使っても手数料を得られるため、プラットフォーマーとして安定的に収益を得られる立場にあります。
 

売上金入金サービスによる現金調節の仕組み

一般消費者にとってATMの用途は出金がメインであるため、一般にATMでは入金よりも出金の方が多くなります。
これはお金が必要な時はATMから引き出すのに対し、会社からの給与は銀行口座に直接入金されることを考えても明らかでしょう。
したがって一般にATMでは定期的にお札を補充する必要があり、駅など利便性の高い場所では保守運用コストも高額になります。

セブン銀行のATMも利便性の高い場所に設置されているため、出金に使われる頻度は非常に高いのですが、入金にも利用される仕組みが用意されています。
その仕組みとは、コンビニにおける現金の売上をセブン銀行のATMに入金することで本部へ送金する点や、法人向けに売上金入金サービスを展開している点です。
こちらの記事によればセブン銀行の現金を調整しているALSOKは月に1回しか来ないことが書かれており、入金サービスがALSOKの出動抑制にも貢献していることが窺えます。
 

電子決済の普及やFinTechが、セブン銀行にとってのリスク

セブン銀行は入出金に比例して手数料による収益が見込めるビジネスモデルです。
したがって、世の中で電子決済が使われるほど現金の必要性は弱くなり、ATMにおける手数料収入は得られなくなってしまいます。
またコンビニなどで電子決済が多く利用されるほどATMへ入金される現金も減少しますので、お札が補充されなくなってしまいます。
こういった点を考えると、セブン銀行のビジネスモデルは電子決済と極めて相性が悪いことが分かります。

世界的に見ると日本では現金決済が好まれる傾向にあり、カード決済はあまり使われていません。
カード決済と電子マネー決済を合算しても、2014年時点で20%に届きません。(参考:日本におけるクレジットカードの利用率は本当に低いのか?
しかし、世界的に見て電子決済の利用率が低い日本であるからこそ、セブン銀行のビジネスモデルは強力であるとも言えるのです。
ただし今後、日本においても電子決済は少しずつ普及していくと考えられます。
電子決済の普及に対して、セブン銀行がどのような手を打っていくのかは注視していく必要がありそうです。
 

まとめ

今回はセブン銀行のビジネスモデルの特徴について分析しました。
セブン銀行は他行と提携することで得られる手数料を収益の柱とした、プラットフォーム型のビジネスモデルです。
その特徴ゆえ、銀行であるにもかかわらずマイナス金利の環境下においても高い収益性を発揮しています。
また、ATMに存在する現金の量がうまく調整される仕組みまで考えられている点は、ビジネスモデルの完成度が非常に高いと言えるでしょう。

セブン銀行のATMから見れば日々の出金と入金がおおよそ釣り合っており、現金を社会に循環させているだけなのですが、その過程で手数料を取ることができている・・・と考えると、収益性の高さにも納得できます。
しかし電子決済の普及によって現金の必要性が低くなるにつれ、セブン銀行ATMの必要性も薄れていくでしょう。
当面は現金を扱うプラットフォームとして安定した収益が期待できそうですが、FinTechなどの動向にどのように対応していくかが重要になりそうです。

関連記事

  1. コンビニをとりまく2つのプラットフォーム構造
  2. 小売店に見るプラットフォームビジネス
  3. 株式投資のためのプラットフォームビジネス概論
  4. [2428] ウェルネット:コンビニ決済のプラットフォーム
  5. 日本のIT業界における、将来性のありそうな銘柄
  6. 「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」は実現するか?
  7. インターネット広告が直面する、広告業の本質的課題