Skip to content

「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」は実現するか?

   

経産省、コンビニが「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」というものを発表しました。
今回はこの実現性について考察してみました。

コンビニ電子タグ1000億枚宣言とは

「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」とは、経済産業省が、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、JR東日本リテールネットと共同で宣言したものです。
原文は、こちらから見ることができ、内容を要約すると以下のようになります。

  • 2025年までにコンビニの全ての取扱商品に電子タグを貼付け、個別管理を実現する
  • 2018年に、実現に向けた実験を実施する
  • 年間に取り扱う商品数は推計年1,000億個
  • 留保条件:電子タグの単価が1円以下になっていること、商品のほぼすべてをRFIDで管理できる環境が整備されていること

 

電子タグの可能性

一般的に、電子タグを導入することで以下のようなことが期待されています。

  • 小売店:非接触・同時読み取りによるレジの効率化、セルフレジ化、ゲートによる自動決済化
  • 小売店:非接触・同時読み取りによる万引き防止システム
  • 小売店:消費期限に応じた価格変更による食品廃棄ロスを削減
  • 小売店:非接触・同時読み取りによる自動棚卸、商品探索
  • メーカー、流通:トレーサビリティによる欠陥商品の回収可能性の向上
  • 消費者:電子タグによる冷蔵庫の中身や消費期限の管理

これを見ると、電子タグによるメリットの多くは小売店が享受することが予想され、コンビニが共同で宣言を出すことも納得できます。
しかしこれらの内容は最近になって言われ始めたものではなく、RFIDタグが開発されてからずっと言われ続けている内容です。
当時から現在まで、コストの問題で実現に至っていません。
唯一、ここ数年でアパレル業界においてはRFIDによる商品管理が普及し始めています。
しかしこれは全体的に商品単価の高い業界であるために実現できていることであり、他の業界では導入は難しい状況です。
 

電子タグのコストが最大の課題

電子タグを導入する上で問題となるのが、電子タグのコストです。
以下のニュースによれば、現在の電子タグの単価は10~20円となっています。

アパレルなどでは進んできた電子タグだが、単価の安いコンビニ商品に取り付けるには、現状では10―20円程度の単価を引き下げる必要がある。また、読み取り制度の向上や電子タグの貼付技術の開発も必要とされ、産官学が連携して取り組みを進めるとしている。
コンビニが全商品に電子タグ貼付へ、レジや棚卸を効率化=経産省

一方、「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」には以下の留保条件が記載されています。

特殊な条件(レンジ温め、金属容器、冷凍・チルド、極細等)がない商品に貼付する「普及型 」の電子タグの単価(ICチップ+アンテナ+シール化等のタグの加工に関する費用)が1円以下になっていること。
コンビニ電子タグ1000億枚宣言

私の意見としては「電子タグの単価を1円以下にすることはほぼ不可能」と考えています。
仮に電子タグが1円になったとすると、1,000億枚では電子タグの市場規模(売上規模)は1,000億円にしかなりません。
この売上を電子タグ関係のメーカーで分け合い、利益は一体どれだけ残るのでしょうか。
そのような投資回収が見込めない状況で、誰がそこまでコストダウンのために研究開発投資をするでしょうか?
スーパーやドラッグストアなどのあらゆる業界に普及したとしても、1円では厳しいと言わざるを得ません。
 

電子タグが普及するためには

これは個人的な意見ですが、現実的に導入する場合は「電子タグのコストは主に小売店に負担してもらい、効率化で回収する」という案に落ち着くと考えています。
なぜなら、電子タグを導入することによる多くのメリットは小売店が享受しているからです。

電子タグのコストを小売店に負担してもらう場合、電子タグのついた商品は通常のバーコードの商品に比べ、電子タグのコスト分だけ仕入れ値が上乗せされることになります。
そして小売店は店舗運営のオペレーションコスト削減によって電子タグのコストを相殺します。
こうすることで消費者にはこれまでと同価格、もしくはそれ以下で商品が提供できるようになります。

電子タグが普及する場合でも、当分の間は世の中にバーコードの商品と電子タグの商品が混在することになるでしょう。
しかしいずれはスーパーマーケットやドラッグストアへも普及し、電子タグのコストも抑えられていくことになる予想されます。
 

まとめ

このニュースを見た時、「経産省やコンビニはこのような宣言を出すことで、多くのメーカーに動いてもらいたいと考えている」のだと感じました。
経産省やコンビニはいざとなったら留保条件を盾に、いつでも撤回することができますので、非常に楽な立場といえるでしょう。
しかし、単純なコストダウンだけで1円以下にすることは非常に厳しいと言わざるを得ません。
この宣言の達成は、電子タグの導入によって電子タグのコスト以上の価値を生み出すことができるかどうかにかかっているでしょう。
そして、コンビニを含む小売店が電子タグのコスト負担を受け入れるかどうかにかかっていると考えられます。

関連記事

  1. コンビニをとりまく2つのプラットフォーム構造
  2. [2428] ウェルネット:コンビニ決済のプラットフォーム
  3. [6078] バリューHR 2016年12月期株主総会
  4. [2461] ファンコミュニケーションズ 2016年12月期株主総会
  5. [6071] IBJ 2016年12月期株主総会
  6. [2491] バリューコマース 2016年12月期株主総会
  7. [2492] インフォマート 2016年12月期株主総会