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インターネット広告が直面する、広告業の本質的課題

インターネット広告が直面する、広告業の本質的課題 published on

ここ2週間ほど、DeNAの運営するWELQをはじめとするキュレーションサイトが問題になっています。
しかしこのような問題が起こるのは時間の問題で、遅かれ早かれ起こるものと感じていました。
この機会に私がここ数年ほど、インターネット広告について感じていたことをまとめました。

そもそもインターネット広告が普及した理由

インターネットにおける広告費はずっと右肩上がりでの成長を続けており、現在も拡大しています。
この理由は主に3つあると考えています。
1つ目は、純粋にインターネットの普及率・利用率が上がったためです。

そして2つ目は、テレビなど既存メディアに比べて顧客に合わせた広告を配信できるためです。
これはインターネットでは行動履歴の取得や属性の推定がしやすいことによります。

最後に3つ目は、個人でも簡単に広告配信による収益化が可能となったことです。
これを専業や副業とする人が現れるほどですので、インターネットに流れ込む広告費がいかに膨大かが伺えます。

 

成功報酬型広告

成功報酬型のアフィリエイト広告は、何らかの契約成立の実績に応じて広告料が発生するビジネスモデルです。
しかし最近では、アフィリエイト広告がインターネットコンテンツの質の低下を引き起こしていると感じる場面が見られます。

誇大広告を助長するアフィリエイト広告

アフィリエイトの負の側面として、誇大広告や虚偽表示を助長することが挙げられます。
例えば最近エセ科学として話題になっている水素水のアフィリエイトもこれに当てはまります。

通常、水素水のメーカーが誇大広告を出して販売した場合、特定商取引に関する法律に基づき改善命令や罰則などを受けることになります。
特に大手メーカーであるほどブランドに傷が付く可能性があるため、誇大広告は行いません。

しかしアフィリエイト広告ではアフィリエイトサイトが大手メーカー商品の誇大広告を出すことで、大手メーカーにとっては間接的に誇大広告が可能となります。
これはアフィリエイトサイトに問題があるのですが、アフィリエイトサイトは個人が運営しているような場合も多いため、法人に比べて取り締まりにくいと考えられます。
また取り締まったとしても、リスクよりもメリットの方が大きければ真似する人は後を絶たず、サイトの数も膨大になるでしょう。

この問題の本質は、アフィリエイトサイトが誇大広告を謳うことで、メーカーにとっては責任を追及されるリスクを転嫁できるという点です。
これはテレビなどのメディアにおける誇大広告よりも取り締まりづらく、非常に厄介だといえます。

広告費に強く影響される

アフィリエイターは基本的に、自分の紹介したいと思う商品を書いています。(と、信じたいです)
しかしランキング形式で商品を紹介しているようなサイトは、ほぼ例外なく広告費の影響を受けています。
商品ごとに報酬が異なる場合、アフィリエイターはどうするでしょうか?
報酬の高い商品を上位にするのではないでしょうか?
また、アフィリエイトに対応していない商品は紹介されないのではないでしょうか?
このようなことを考えると、商品紹介のランキングは広告費ランキングでもあることが分かります。

これは広告業界の本質的な課題で、他メディアでも同様の問題があります。
また、最近ではテレビ番組内でスポンサーの商品を紹介しはじめることがありますが、これも広告費や広告主の影響を強く受けた結果だと言えます。

事例

誇大広告の事例は健康食品や医療などの分野でよく見られます。WELQもこれでしたね。
医学的根拠がないのにサプリや食品などが勧められている事例が多く見られます。
例えばインターネットで尿酸値について調べた時、「クエン酸を取ると尿がアルカリ化して尿酸値が下がる」といった記述が多く見られましたが、医療関係者向けのサイトでは「クエン酸をそのまま摂取しても尿のアルカリ化は期待できない」と正反対のことが書いてありました。

またランキング形式で商品がまとめられているサイトでは、報酬の多い順になっているサイトが多いです。
私が経験した事例としては、シャンプーを調べていた際、ランキング形式で紹介されているサイトを多く見かけましたが、多くのサイトでランキングが似通っていました。
結局、とある薬局で取り扱っているノンシリコンのアミノ酸シャンプーを使い満足していますが、このシャンプーはどのランキングを見ても見つけられませんでした。
おそらくアフィリエイト自体を行っておらず、広告費を出していないからなのでしょう。

 

クリック報酬型広告

クリック報酬型広告は、Webサイトの一部に貼られた広告がクリックされることで収益が入るビジネスモデルです。
しかしクリック報酬型広告も同様に「集客できる記事」を追求した結果、コンテンツの質を低下させてしまう可能性を孕んでいます。

Googleでも「情報の正しさ」というコンテンツの質は判定できない

現在、Googleの優れた検索アルゴリズムのおかげで、Web上の求めている情報へ手軽にアクセスできるようになりました。
しかし最近のインターネットを見ていると、「情報の正しさを判定できない」という課題に直面しているように感じます。
アメリカの大統領選でGoogleが誤報を掲載したこともありますが、これもその課題の一例でしょう。

「情報の正しさ」は多数決で決まるわけでもないので、たとえGoogleでもアルゴリズムで機械的に判定することはできません。
科学の世界でも今まで信じられていた理論が覆されることがありますし、そもそも「情報の正しさ」とは判定できないものだと思います。

ではどうするかといえば「情報の正しさ」を保証する代わりに、「情報の発信者」を保証するトレンドとなる可能性があります。
これは今までのマスコミでも同じで、「○○新聞社の記事だから・・・だ」と言われたり、
しかしテレビや新聞、雑誌などはいずれも企業なので、あまりにおかしなことをすれば行政指導が入るでしょう。
そのため、インターネットに比べれば一定の抑止効果はあったのではないかと思います。

今回の問題は、誰もが自由に情報を発信できるインターネットであるからこそ、厄介な問題といえるでしょう。
最も現実的なは、「情報の発信者のランク付け」を行うことであり、インターネット広告業界はその方向へシフトしていくのではないかと考えています。

 

テレビ業界との共通点に見る、インターネットメディアの未来

無料のメディアを事業として運営する場合、大抵は広告費によって収益化することになります。
インターネットの黎明期は趣味で記事を書いている人が大半だったため、見つかる情報に広告色はありませんでした。
しかし最近ではインターネットに多くの広告費が流れ込むようになり、広告に影響されるようになってきました。
よくインターネットで「マスコミがブームを捏造している」などと言われることがありますが、今となってはインターネットでも同様のことが起こっているといって良いでしょう。

地上波のテレビ番組は、番組の質の低さや、広告色の強さを感じることが多いです。
この背景には広告費で運営されていることや、広告費自体が減少していることがあります。
広告費で運営された結果、コンテンツの質が二の次になるのは現在のインターネットも同様で、無料メディアの宿命とも言えるのかもしれません。
地上波テレビ番組の視聴率が低迷している一因には、番組の質の低下があると考えられます。
同様に、インターネットのコンテンツの質が低下して行くことは、インターネット産業発展の妨げになっていくかもしれません。

一方、視聴料によって運営される衛星放送のテレビ番組はコンテンツの質が保たれており、比較的好調です。
DeNAの南場智子氏は「インターネットで手軽にアクセスできる有料プランの医療情報」を推進して失敗したという話がありましたが、インターネットメディアは改めてこの方向性を考え直す時期に来ているのかもしれません。

 

最後に

私はインターネット広告のビジネスモデルは決して悪いものではなく、むしろ優れていると思います。
しかしクオリティの低い大量の記事が人気を集め、広告によって収益を上げてしまう現状は、インターネットの利用者にとって明らかにマイナスだと考えます。
そしてそれは、長期的に見ればインターネット広告業界にとってもマイナスになります。

インターネット広告業界において、この問題に対処していくことは避けられないでしょう。
情報発信者を格付けできれば状況は緩和されるのか、それともインターネットメディアは有料配信に移行していくのか、それとも広告費による運営が続いていくのか、それとも別のビジネスモデルが生まれるのかは、分かりません。

いずれにしてもWELQ騒動は倫理的な問題だけで片付けられるものではないと思います。
今後、インターネット広告業界は本質的な課題に向き合っていく必要があるでしょう。


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