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電子書籍のコスト構造と価格戦略

   

最近、電子書籍を利用するようになって、そのコスト構造や価格戦略を実感しました。
今回はコスト構造や価格戦略についてまとめました。

電子書籍のコスト構造

電子書籍では紙書籍に比べてどのようなコストが減るのかを考えてみます。

初期費用(制作費・印税)は紙書籍と同様に発生

制作費や印税はこれまでの紙書籍と同様に発生すると考えられます。
また紙書籍ではサイズが決まっているためレイアウトも1パターンしかありませんが、電子書籍では端末やアプリによってレイアウトが変わる可能性があります。
このため、作品によっては紙書籍より制作費がかかっている可能性もあります。

変動費(製造・流通コスト)が0

電子書籍の最大の特徴はここにあります。
電子書籍は印刷しないので紙やインクなどの印刷コストはかかりません。
電子書籍はサーバから配信するだけですので、配送や店頭販売にもコストがかかりません。
電子書籍では在庫という概念もありませんので、倉庫代や在庫ロスもありません。
電子書籍の配信サービス運営費やサーバ管理費が販売管理費とも言えますが、一つのサーバで多数の作品を管理できますので1作品当たりにかかる配信コストは圧倒的に小さくなります。

電子書籍の収益性

次に、電子書籍では収益性の面からどのような利点があるのかを考えてみます。

書店よりも高い利益率

書店の利益はまるごと、電子書籍配信サービスの収益になります。
その上、書店に比べると店員の人件費分が大幅に削減されており、万引きなどによるロスもありません。
こうして考えると書店よりも効率化されており、利益率は向上していると言えます。

削減した変動費(製造・流通コスト)による利益

電子書籍の価格を見てみると、紙書籍と同様、もしくは少し安い程度の価格が一般的です。
価格が紙書籍と変わらない場合、電子化により0となった製造・流通コストは全て利益となります。

限界利益率が高く、値引きができる

日本の現行制度では、紙書籍は再販制度により価格を下げることができません。
一方、電子書籍では再販制度の適用を受けないため、キャンペーンなどで積極的な値引きが行われています。
前述のように電子書籍では1作品当たりの変動費が小さく、限界利益率が高いことも値引きのしやすさの一助となっています。
例えば「発行から1ヶ月経過毎に10%OFF」「発行から1年毎に1/2の価格にする」といったことができます。
値引きができることで、定価では買わなかった人たちにも買ってもらえる可能性が生まれ、収益性が向上します。
極論を言うなら制作費さえ回収できれば、その後はどれだけ値引きしてでも売れるだけ売ったほうがよいわけです。
最終的には1円や10円で売っても利益になります。
これは変動費がかかる紙書籍では真似できません。

他人に貸し出せないことによる売上

電子書籍では他人に貸し出す仕組みがありません。
スマホなどの端末を他人に貸し出すこともあまり現実的ではないため、結果的により多くの人に買ってもらえる可能性があります。
ただしこれは実際にどの程度の影響があるかは分からず、収益性の主要因にはならないと思われます。

まとめ

以上、電子書籍のコスト構造や価格戦略の観点から分析してみました。
その結果、電子書籍は紙書籍に比べて限界利益率が高く、コスト構造・収益性の面で非常に優れていることがわかりました。
全てが電子書籍に置き換わるということはまず無いと思いますが、今後も着実に普及していくことになるでしょう。

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