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2020年の株式投資のふりかえりと、2021年に向けて

   

年末ということで、今年の投資損益を整理したり、ふりかえりを行いました。
毎年やっていることですが、せっかくなのでこちらに公開してみることにしました。

2020年の印象的な出来事

今年はなんといっても新型コロナが印象的な一年でした。
各業界が多かれ少なかれ影響を受けたと思いますが、特に印象に残っていることを2つ挙げます。

JR東海が赤字に転落する日

これまで一般に盤石と考えられていた鉄道系の会社が、赤字決算になったのは衝撃を受けました。
通勤定期や交通ICカードによりキャッシュフローも良いでしょうし、事業の多角化も進んでいます。
特に [9022]JR旅客鉄道株式会社(JR東海) は、東海道新幹線によりビジネスおよび観光の双方から収益を得ているため、そう簡単には崩れないと思っていました。
世の中のライフスタイルはそう簡単には変わらないと思っていただけに、たった数ヶ月でこれだけの変化が起きたのは衝撃的でした。

オフィス向けの需要がなくなる日

オフィス向けのものを扱っている業界も今後が気になっています。
例えば複合機などの業界では既に電子化・ペーパーレス化が逆風になっていましたが、これらのトレンドは一気に加速することになるでしょう 。 具体的な銘柄は[7751]キヤノン、[7752]リコー、[4902]コニカミノルタ などで、どの企業も大きな影響を受けています。
そして何より恐ろしいのは、このトレンドは一方通行であり、コロナが収束しても需要が回復しないということです。

電子化・ペーパーレス化が進んでしまえばわざわざ紙に戻す企業はほとんどないでしょうし、そもそもオフィスへ出社しなければ複合機を使いません。
リモートワークの会社が今までより増えることに疑いの余地はなく、これらの変化はコロナが収束しても戻りません。
複合機だけでなく、オフィス向けの不動産なども今後徐々に影響が出てくるでしょう。

うまくいったと思える投資判断

それでは、まず2020年のよかったと思える投資判断を挙げていきます。

新型コロナによる下落を予測して立ち回ることができた

2020年2月上旬〜中旬には、新型コロナで下落相場になる見込みを立てていました。
下落相場になる見込みを立てていたので、2月中旬にはそこそこの含み益があるものは全て利益確定していましたし、下がったら何を買うか考えておく余裕もありました。
そのため2月〜3月の大きな下落において機会損失を被ることはなく、むしろ買い向かうことができました。

この見込みを立てられたのは、日々の情報収集を行っていたこと、特に著名な方の言動をウォッチできていたからだと考えています。
ビジネスの世界で著名な人は元々感染症やそのリスクへの理解が深く、2月〜3月には既に動き始めていた方が多いです。
やはりビジネスの世界で活躍する人は教養、情報への感度、スピード感などに優れていると感じたので、これからも情報収集の一経路にしたいと考えています。

新型コロナや株価の波に乗って売買ができた

長期で保有してもよいと感じる銘柄については短期〜中期でも売買してみました。
これは、5月〜12月頃において比較的ボラティリティがあったためです。

基本的には、以下のポリシーで売買していました。

  • これまでの株価やトレンドから、安いと感じた所で購入
  • 下がったら買い下がり
  • 20%前後の含み益が出たら売却

具体的には、以下に挙げる銘柄を取引しました。

  • [8252] 丸井グループ:自粛要請や感染拡大などに合わせて上下するため、それに合わせて売買
  • [7077] ALiNKインターネット:収益性を下支えにして購入し、上昇したタイミングで売却
  • [8053] 住友商事:高配当を下支えにして購入、買い下がり。上昇したタイミングで売却
  • [9437] NTTドコモ:コロナでの高騰で売却し、下がったタイミングで購入。最終的にはTOBで売却
  • [4556] カイノス:コロナに関連する可能性を感じたので、安めで購入し、上昇したタイミングで売却
  • [4784] GMOアドパートナーズ:GMOグループ全体で上昇していたタイミングに合わせて売却

「20%前後の含み益が出たら売却」というポリシーはうまく機能したと思います。
20%としているのは高配当銘柄(配当利回り4%〜5%)を4〜5年保有したときの収益を前倒しするという考え方によります。
4〜5年の収益を前倒しするのは「4〜5年あればまた下落相場は訪れるため、その際にまた仕込めば良い」と考えているためです。

成長が見込める銘柄は機会損失の可能性もありますが、今後もこの売買は継続してみようと思います。

中長期で保有したいETFを選定し、投資できた

今年は資産形成のためのポートフォリオ設計と、そのためのETF9選という記事を書きましたが、こちらに挙げた銘柄を中心に買い増しをすることができました。
これらは下落や調整の局面で自信を持って買増しましたが、それを後押ししたのは以下の2点が大きいと感じました。

  • ETFであり、リスクが分散されていること
  • 予め銘柄を選定しておいたこと

下落局面ではどうしても「この銘柄は本当に大丈夫なのだろうか」という不安に襲われます。
そして買い場を逃して後悔する、ということが起こりがちです。
今回ももっと購入しておけばよかったと思う節はありますが、過去と比べると大きな成果に繋げられたと考えています。

予想外だったこと、イマイチだったこと

次に、反省点を挙げていきます。

石油価格がマイナス価格になること

これは本当に予想していませんでした。
こちらで言及した[1699] NEXT FUNDS NOMURA 原油インデックス連動型上場投信 を購入していたのですが、その後に原油価格が大きくマイナスになり、ETFも大きく下落しました。 そして、このときは下落した局面で買い向かう自信はありませんでした。

ナンピンで買い増しできていれば今頃はプラマイゼロに落ち着いていたと思いますが、配当や分配金もないETFでそれを行う勇気はありませんでした。

3月の下落からの急回復

3月に大きく下落する局面がありましたが、そこからは予想外に早く株価が回復しました。
当時は「もう少し下げが続くだろう」と考えており、まさか「コロナによって行き場を失ったお金が株式市場を押し上げる」とは考えてもいませんでした。 そのため、一部の銘柄においては投資の機会損失を被ってしまいました。

今回ここから得た学び(というか仮説?)は日経平均のPBR0.8はそうそう切らないということです。
リーマンショックのときですら日経平均のPBRは0.8を切っておらず、2011年〜2012年の円高のときでも0.9程度です。
私は2011年頃から株式投資を行っているため日経平均8,000円などが強く印象に残ってしまっていますが、こういったアンカリングのバイアスに惑わされず、PBRなどの指標も含めて客観的に判断していくべきだと実感しました。

なお、日経平均のPBRの推移はこちら(外部サイト)で見ることができます。

2020年から学ぶべき教訓

2020年の出来事や失敗から、学びや教訓についてまとめました。

想定外を想定して動くこと

今年で一番感じたことは、やはり未来を見通せるなんて思わないほうがよいということだと思います。
計画を立てたり未来を予想することは自由ですし、重要でもありますが、それに100%依存するのは非常に危険です。
所詮人間に、未来を見通すことなどできないのです。

この教訓は2011年に得た人も多いでしょう。2011年にはあれだけ安泰と思われていた電力株でしたが、その神話が一気に崩れ落ちました。
2020年は鉄道株はもちろん、航空株もこのような事態になることを予想できた人はいないと思いますし、原油価格がここまで下落することを予想した人もいないと思います。 全てを予想しようとするのではなく、常に想定外の何かが起こることを前提とし、その際のリスクが限定的になるように行動することを心がけていきたいと思いました。

下落局面で買い向かうための判断基準やフレームワークを作ること

下落局面・調整局面で買い向かうことができたのは、これまでに比べて大きく成長を実感しました。
一方で、購入を後押しする判断基準などはまだまだ不十分であることも実感しました。
このためには客観的に判断できる基準を、自分なりに積み重ねていくことが重要だと考えています。

この一年をふりかえると、ETFを選定しておくことで下落局面でも買えるようなフレームワークを確立できたので、これは良かったと思っています。
一方で、どこまで下落するかをうまく見極められませんでしたが、日経平均のPBR0.8はそうそう切らないという判断基準を得られました。 そのため、今後はPBR0.9くらいであれば買い向かうようにしていきたいと思います。
(ただし前述のように「すべてを想定することはできない」ので、0.8を切った場合のリスクを限定的にすることを忘れてはいけませんが。)

価値の下限はゼロではなく、マイナスである

これは石油価格がマイナス価格になった出来事から得た教訓です。
今までも薄々わかっていたつもりでしたが、実践しきれていなかったことを痛感しました。

よくよく考えれば、今までにもこういうことはあったはずです。
原発も、処理するのに費用がかかるのであれば実は資産価値がマイナスということは有り得ます。
老朽化した建物も同様で、存在価値よりも解体費用のほうが大きければ、価値はマイナスになりえます。

モノの価値は0円が下限ではなく、マイナスにもなり得るということを深く心に刻みたいと思います。
(株式は有限責任なので、その価格自体が0円より下になることはありませんが…)

みんなが良いと思うものには投資しないこと

鉄道株などの動きから感じることは、みんなが盤石だと信じているものには、投資しないほうがよいということです。
投資とは「世の中において価値が見い出されていないものに対して、先回りすること」だと考えています。
つまり、価値があると信じる人が多いものほど、既に投資する価値がないのです。

私は鉄道系はあまり投資しておらず、ときどき [9142]九州旅客鉄道 を保有する程度でしたが、まさかここまで下がるとは思っていませんでした。 この教訓はこれまでにも意識していましたが、これからも大事にしたいと思います。

2020年の買ってよかった銘柄

2020年に特に買ってよかったと感じる銘柄をまとめておきます。

[1555] 上場インデックスファンド豪州リート(S&P/ASX200 A-REIT)

1,600円前後を推移していましたが、3月には800円程度の半額まで下落したREITです。
2020/12/30時点では1,587円となっており、ほぼ回復したといってよいと考えています。

3月23日〜25日辺りに、奇跡的にほぼ底値の800円前後で2,000株ほど購入できました。
そのおかげで、これだけで含み益が約150万円、さらに分配金で約8万円となっています。
分配金の利回りは3.55%まで落ち着いてきたので、そろそろ利益確定してもよい頃合いです。

[2413] エムスリー

今年1年で株価が3〜4倍に上昇した銘柄です。
元々、製薬業界のMRをITに置き換える事業が伸びていた所に、新型コロナの影響で一気に加速した銘柄だと考えています。

7月に4,800円辺りで買いましたが、12/30時点では9,743円です。まさか半年足らずで2倍になるとは思いませんでした。
まだまだ未来がある銘柄だと考えているので、 100株しか買っていなかったのが悔やまれますが、株式分割されたら半分だけ売却して投資金額を回収するのもありですね。

[3468] スターアジア不動産投資法人 投資証券

REITです。購入したタイミングは8月で、スターアジア不動産投資法人とさくら総合リート投資法人が合併した後あたりです。
オフィス系などコロナの影響を受ける不動産も所有しているようですが、分配金利回り7%台で放置されるのは割安すぎると感じたので、買ってみました。

買ったときは41,600円、分配金利回りは7.48%でした。
今では20%程度値上がりして50,400円まで来ましたが、それでも分配金利回りはまだ6.18%とREITの中でもトップクラスです。
分配金利回りが5%になったら売却かなぁと考えていますが、逆算すると62,260円…そこまで上がるだろうか…。

最近注目している銘柄

最後に、最近注目している銘柄についてもまとめておきます。

[8410] セブン銀行

以前こちらで紹介したセブン銀行ですが、最近は株価が右肩下がりです。
ついに配当利回りは5%を超えました。

確かに元々キャッシュレスの流れがあり、コロナもキャッシュレスを加速させるものなので逆風ではあります。
が、直近の業績などを考えると、あまりにも下げすぎのように感じています。

電力株

電力株が全体的に下落し続けています。
その結果、[9503] 関西電力 のように、配当利回りが5%を超える所も出てきています。

この背景には大きく2つあると考えています。 一つは原発の資産価値がマイナスとなる可能性がある点、もう一つはSDGs関係で二酸化炭素排出がマイナスである点です。
前者はともかく、後者が影響していると考えられるのは、原発を持たない [9511] 沖縄電力 も下落が続いているためです。
(沖縄電力は観光需要も減少しているとは思いますが、12月に年初来安値は下げすぎだと考えます)

以下のように、今後の電力株は設備投資などが必要になるという話もあります。

市場では「水素をはじめとする自然エネルギーへの転換が加速している状況を踏まえると、電力会社はこれから膨大な設備投資が必要となる。ただでさえ赤字が見込まれる状況下なので、減配リスクも警戒される。機関投資家からすると避けたい銘柄」(国内証券)との声が出ていた。
ホットストック:電力株は軒並み年初来安値、機関投資家などがポジション調整売りか

が、そうなれば実際には設備投資の費用は電気料金へ転嫁されるなど、全て電力会社の負担にはならない可能性が高いと考えています。
したがって、原発関係を避けるのは理解できますが、沖縄電力であれば購入を検討する余地は十分あるように感じています。

2021年以降にやっていきたいこと

2021年以降、新たに始めたいことがあります。それは、カバードコールとターゲットバイイングの戦略です。
カバードコールは「現物を保有した上でコール売り」を行うもので、ターゲットバイイングは「購入できるだけの資金を用意した上でのプット売り」を行うものです。
いずれにしてもリスクが限定的なオプション取引になりますし、うまく活用することで利回りを高めることができます。

そしてオプション取引といえば先物…ですが、始めるには以下の課題があります。

  • 証拠金取引であるため、ロスカットされないことを担保するには、膨大な元手が必要
    • 日経平均225先物は1枚あたり×1000なので、今だと2,800万円程度の資金を動かすことに相当するので厳しい。 日経平均の18,000円までの値下がりに耐えるだけでも、1,000万円以上は必要となる
    • TOPIX先物は1枚あたり×10000なので、今だと1,800万円程度の資金を動かすことに相当する。やはり厳しい
    • JPX日経400先物は1枚あたり×100なので、165万円程度の資金を動かすことに相当する。 ただし金額面はともかく、流動性が壊滅的なので厳しい
  • 先物は期日があるので、できれば期日がないものにしたい
    • これまではくりっく株365という日経平均の取引所CFDがあったが、最近は期日が設定された(改悪された)
    • 日経平均なら店頭CFDがあるが、万が一証券会社が倒産したような場合の保証がない

また、日本では株式の個別銘柄についてはオプション取引ができないと思っていたのですが、実は「かぶオプ」という有価証券オプションが存在するようです。
が、こちらについても以下のような課題があります。

そして先物にしてもなんにしても、始める場合は確定申告をできるように準備しておかなければなりません。
いずれにせよ、少しずつ調べて手を出せるようにしていきたいです。

まとめ

新型コロナにより社会も相場も大変な状況ではありましたが、株式投資や資産運用などの面に絞れば、プラスになった一年でした。
苦しんでいる人や大変な方も多いため手放しでは喜べない状況ですが、その中から得られた教訓は少しでも仕事や投資を通じて世の中のために活かしていきたいと思います。

またこんなときだからこそ「応援したい企業に投資し、応援できない企業には投資しない」「世の中に対してプラスになることに投資をする」ということも大事にしなければ、と思いました。
資産運用の面ではどうしても利回りなどに偏りがちですが、そこから得られた利益をベンチャー企業などへ振り分けていきたいと思います。