「電子書籍によって破壊される市場」を考えると、真っ先に思い浮かぶのは出版社や紙書籍を販売する書店ですね。
しかしよくよく考えてみると、「それ以外の市場ニーズも取り込んでいるのでは?」と思い、まとめてみました。
書店併設カフェへの影響は限定的
最近は書店とカフェが併設されていて、自由に本を読めるカフェがあります。
一見、電子書籍が競合するかな?と思いましたが、影響は限定的と思われます。
というのも、利用者の多くは本を読むことが目的ではなく、カフェのついでに本を読んでいるのだと思われるからです。
単に本を読むためなら図書館に行った方が効率的かつ経済的ですから。
漫画喫茶の顧客の獲得
これまでコミックを読むために漫画喫茶に行っていた顧客の一部が電子書籍へ流れます。
具体的には、以下のような理由で漫画喫茶を使っていた人がターゲットになります。
- 顧客1:本当は買いたいけど、家にコミックを置くスペースがないので、漫画喫茶で読んで我慢している
- 顧客2:コミックを全部買うのは高いので、漫画喫茶で我慢している
- 顧客3:そもそも一回読めれば満足
顧客1は電子書籍にすることで家でじっくり、いつでも読めるというメリットが生まれますね。
また、電子書籍はキャンペーン等により実質的な価格が漫画喫茶で読むよりも安くなる場合があります。
こうなってくると、顧客2や顧客3も電子書籍で読むようになるのではないでしょうか。
加えて、好きな時間に好きな場所で読める、後から何度でも読めるという利点も考慮すれば、電子書籍は非常に優位となります。
このような理由から、漫画喫茶は電子書籍サービスによって顧客を奪われる可能性があります。
古本購入層の獲得
従来「コミックを全部買うのは高い」という人にとっての選択肢の一つは、古本を購入することでした。
しかし、電子書籍によってこの顧客層も奪われる可能性があります。
例えば古本屋でコミックを購入すると400円の本なら200円程度、つまり半額程度となります。
またAmazonマーケットプレイスでも古本を購入できますが、こちらは送料等の関係で1冊当たり最低でも258円です。
コミックは割高になってしまいますが、新書などは300円前後で購入できてしまうこともあります。
一方、電子書籍ではキャンペーンや値引セールがあり、実質半額以下で購入できる機会があります。
そのため、実質的な価格帯は古本屋やAmazonマーケットプレイスとあまり変わらないことも多いです。
また、古本を嫌う人には電子書籍の方が好まれるでしょうし、持ち運びの面でも電子書籍が勝ります。
この他、古本屋で購入しても著者には何も還元されませんが、電子書籍では印税が著者に入るという違いもあります。
こういった点から電子書籍を利用する顧客が一定数いることも、電子書籍を後押しする一因となるでしょう。
このような理由から、ブックオフやAmazonなどの古本を取り扱う業者も、電子書籍サービスによって顧客を奪われる可能性があります。
コンテンツ配信サービスが真の競合?
近年、電子書籍や動画、音楽など様々なデジタルコンテンツの配信サービスが増えています。
電子書籍や動画などがいつでもどこでも、同じように簡単に見られる、ということを考えれば競合サービスとなりえます。
特に最近はコンテンツの定額配信も増えており、ユーザを囲い込んでストックビジネス化する傾向にあります。
しかし、実際に人が使える時間は1日24時間しかありませんので、各サービスがユーザの時間を奪い合う形となります。
定額サービスの利用を打ち切られないようにするには、コンテンツのラインナップや全体的なクオリティで勝負していくことが求められることになるでしょう。
コンテンツ配信サービス同士は一見競合しないように見えますが、実は最大の競合相手なのかもしれません。