Skip to content

[3658] イーブックイニシアティブジャパン:コミック中心の電子書籍ストア

   

電子書籍銘柄として、イーブックイニシアティブジャパンについて調べました。

電子書籍配信ストアeBookJapan

イーブックイニシアティブジャパンは電子書籍とクロスメディアの2つの事業を展開しています。
特に電子書籍が柱となっており、電子書籍配信ストアeBookJapanを運営しています。
eBookJapanの特徴はコミックを中心としたラインナップで、2016/7時点での取扱冊数は50万冊弱となっています。

売上高向上と収益化が課題

IR情報の資料からこれまでの売上高の推移をまとめると、以下のようになります。単位は百万円です。
なお2012/1~2014/1は単独事業での決算、2015/1以降は連結決算です。
また2017/1は、実際には2017/3の変則決算となる予定です。

2012/12013/12014/12015/12016/12017/1(予想)
電子書籍事業 売上高2,1763,0444,1554,9885,199情報なし
全事業 売上高2,1763,0444,1555,1297,1849,500
全事業 営業利益309445450313-166

これを見てまず気になるのは営業利益の低下です。
2012/1~2014/1は営業利益率10%強と、電子書籍配信事業として妥当な業績だと思います。
2016/1や2017/1は営業利益が悪化していますが、これはシステム開発費などの投資によるもののようです。
したがってシステム投資で売上高が伸びていくのであれば問題ないと思われます。

しかし最も気になるのは、電子書籍事業の売上高が伸び悩んでいる点です。
これまで急速に伸びてきた電子書籍の売上高が、2016/1では急速に鈍化しています。
現在、電子書籍の市場は急速に拡大していますので、この時期に売上が伸びていないのは非常に厳しいでしょう。
2017/1の予想における事業毎の内訳は出ていませんが、電子書籍がどれだけ伸ばせるのか気になる所です。

ちなみに2016/7時点の電子書籍事業の売上高は2,673百万円となります。
これまでの決算を見ても売上が期末集中する傾向もないので、単純に2倍すると2017/1も2016/1と同程度の売上にとどまりそうです。

2016年からヤフーの子会社に

2016年の6月~8月頃、ヤフー[4689]のTOB(株式公開買い付け)が成立し、子会社となりました。
買収後の具体的な戦略などは検討中と思われますが、公式資料では以下のようなシナジーを期待しているようです。

  1. コンテンツの提供におけるシナジー
    「eBookJapan」と「Yahoo!ブックストア」の連携により販売コンテンツを相互に補完、より多くのコ ンテンツを提供することでユーザーメリットに繋がることが期待されます。また、男性ユーザーによる購入比率が全体の過半を占める「eBookJapan」と女性ユーザーによる購入比率が全体の過半を占める 「Yahoo!ブックストア」の連携は両社にとってももちろんのこと、コンテンツホルダーにとっても販売 機会の向上に繋がることが期待されます。
  2. 販売促進におけるシナジー
    両社が蓄積してきた販売促進手法の共有や公開買付者グループのマーケティングデータ、レコメンドシステム(ある商品と同時に購入される頻度の高い商品を表示するシステム)の活用により、ユーザー にマッチしたコンテンツの提示が可能となり、より効率的な販売促進やユーザーの満足度に繋がること が期待されます。
  3. システム開発におけるシナジー
    アクセスデータやカスタマーサポートに寄せられたユーザーの意見を参考に行ってきた、両社システ ム開発のノウハウ共有や今後のプランの共有により、ユーザーにとってより魅力的なサービス作りがで きると考えられます。
  4. 集客におけるシナジー
    両社の過去のデータを基に効果の高かった施策を活用した公開買付者以外のインターネットメディアでの広告宣伝の効率化や両社の知見を交換することによる SEM(サーチエンジンマーケティング。検索からの集客を増やす手法)の改善により集客効果が期待されます。
    ヤフー株式会社による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明及びヤフー株式会社との資本業務提携契約の締結のお知らせ

いろいろ書いてありますが、eBookJapanにとってはヤフーからの送客が期待できるようになることが最も大きいでしょう。
ヤフーは国内の大手インターネットメディアであり大きな集客力を持っていますので、その力を借りられるのは非常に大きいです。
またヤフーブックストアとの共同キャンペーンで宣伝や相互送客を行ったり、ヤフーのブランド名を借りることも考えられます。
一方、既にヤフーブックストアを持つヤフーが買収する必要があったのか疑問でした。
しかしユーザ層が男性と女性で異なるということなので、お互いに競合する影響は比較的小さそうです。

ブランドイメージや使い勝手などへの配慮から電子書籍ストアとしては両方とも残るかもしれませんが、共通化できる部分は統合され、開発も効率化されると思われます。
またeBookJapanは小学館出身の人が立ち上げており、そういった方面へのコネクションにも期待しているのかもしれませんね。
以上を総合すると、長期的にはプラスに働くと見て良いのではないでしょうか。

株主優待は自社電子書籍ストアの金券

eBookJapanで使えるeBook図書券が株主優待となっており、保有数および期間によって額面が決まります。

保有数\保有年数1年未満1年以上3年未満3年以上
100株以上1,080円2,160円3,240円
500株以上2,160円3,240円4,320円
2,000株以上3,240円4,320円5,400円

利回りが最も良いのは100株で、2016年11月18日の終値で1.27%~3.80%となります。
eBookJapanを利用する方であれば、100株で3年以上保有するのは悪くないと思います。
ただし、現時点では配当はありません。
おそらく2017年3月期、2018年3月期も期待はできないと思われます。
そういった点も踏まえ、長期投資が前提になりそうです。

まとめ

イーブックイニシアティブジャパンの電子書籍事業を中心に分析しました。
売上高を見ると2015/1までは順調に推移していましたが、2016/1で伸び悩んでいる点や、投資による営業利益圧迫が懸念です。
一方、ヤフーとのシナジー効果は長期的にプラスに働くと考えられます。
シナジーの影響は未知数ですが、1~2年の間はあまり業績に期待しない方が良さそうです。

株主優待目的であれば、100株だけ、3年以上を目標に保有するのが良いでしょう。
ちなみに私はTOB前から保有していましたが、TOBの際に微益で100株を残して売り抜けてしまいました。
現在はまた株価が下がってきていますが、もう少し下がったら購入も検討しようと思います。

関連記事

  1. [4348] インフォコム:国内最大級の電子書籍ストア
  2. [3641] パピレス:電子書籍販売のみの単独事業銘柄
  3. [9468] カドカワ:ラノベ・コミックに強い電子書籍ストア
  4. 電子書籍が破壊する既存の市場と、競合するサービス
  5. 電子書籍のコスト構造と価格戦略
  6. 廃止されにくい株主優待の選び方
  7. [9831] ヤマダ電機:長期保有の優待が高利回り