2018年3月21日(水)、渋谷のセルリアンタワー東急ホテルにて開催されたGMOインターネットの株主総会に行ってきました。
株主総会の雰囲気
2年ぶりの参加でしたが、例年に比べて出席者は少ないように感じられました。
お土産の縮小や抽選会がなかったことも影響しているかもしれません。
今回は株主からの議案が6件提案されていたのが例年との大きな違いでしょうか。
ただ総会自体は荒れることなく、穏やかに進んだように思いました。
経営状況の説明では、仮想通貨(ビットコイン)の仕組みから解説があったり、あおぞら銀行との提携を全面に押し出していました。
オアシスからの株主提案
株主提案をしたオアシスインベストメントから、具体的な説明がありました。(日本語が話せない方なので、通訳が入りました)
オアシスは2017年12月時点では570万株(4.9%)のようですが、この時の説明では7.22%を保有しているとのことでした。
株主提案については以下のような説明がありました。
- GMOインターネットは子会社の時価総額に対して割安である。これをマネジメントが放置している
- 熊谷氏の影響力の大きさについて。例えば、以前買収を拒否したことは、熊谷氏の越権行為である
- 熊谷氏には、ワインや飛行機などの個人的な費用を会社に肩代わりさせている(?)という疑義がある
- 予想業績を達成できなかったこと
これに対し、熊谷氏は以下のような主張をしました。
- オアシスとは対立しているわけではなく、目的は同じだと捉えている
- 詳細については後日、Web上で公開する
- インターネット事業は動きが速く、意思決定の速さが重要である
- 10年連続で増益を実現している。連続増益できている企業の中でも、10年連続は上場企業で27位
- ボトムアップで判断する仕組みは出来上がっている
- 透明性のある評価制度を実現している
- 2017年、営業利益や経常利益は予想未達だったが、公約通り配当などは実施している
結果的には、いずれも否決されました。
賛成比率については公式サイトの臨時報告書の訂正報告書で開示されています。
この中で、特に気になったのは以下の2点です。
- 取締役の賛成割合は全体的に83%程度だが、熊谷正寿氏の賛成割合だけ74.19%と、約10%程度低い
- 第5号議案(買収防衛策廃止)の賛成比率は44.77%
前者についてはオアシスが反対と見れば妥当性のある数字だと思われます。
しかし第5号議案は過半数での可決であり、あと6%ほど高ければ買収防衛策廃止が可決されていたことになります。
2017年時点の株主構成を見ると、熊谷正寿事務所が31.0%、熊谷正寿氏が9.9%を保有しており、これら40.9%は間違いなく反対票です。
そのため2/3が必要な議案は可決が不可能ですし、過半数が必要な議案についても59.1%の大半が賛成にならなければいけません。
その中で44.77%の賛成比率を集めたことは、有意義な株主提案だったと言えるでしょう。
質疑応答
以下のような内容でした。
- Q1:クリック証券の貸株制度について、後発なのだから使いやすさなどを意識してほしい。長期優待の対応など。
意見として必ずお伝えする。 - Q2:仮想通貨について、決済面で問題がある。このままでは投機目的だけになってしまうと考えている。
決済面についてはコミュニティが解決していく。
仮想通貨はマイニング、交換、決済の3つの事業に大別される。
ビットコインは金だと思っており、決済よりもマイニングや交換に力を入れている。 - Q3:とくとくBBのe-mobileについて、ソフトバンクにサービス停止を命じられた。一ヶ月前の連絡で、おそすぎる。
申し訳なかった。改善していく。 - Q4:18日の総会に出られなかったため、2年連続で不祥事(今年はGMOペパボのカード情報流出)についてコメントが欲しい
(GMOペパボ社長の佐藤氏より)総会では本件について説明などを行った。
申し訳ないが、セキュリティ上の理由により詳細を開示することはできない。 - Q5:モバイルエンタメ事業について
申し訳ないと思っている。
ただしやめれば失敗だが、上手く行けば一発逆転の狙える事業だと考えている。
(今後、某大出版社と何かをリリースするようなことも仄めかせていました) - Q6:ワイン事業やプライベートジェットについて
プライベートカンパニー。ワイン、飛行機、自動車などは個性として、接待のときに効果的だった。
ワインは外から直接買うと高いが、免許を持っており安く仕入れられるので、社内で金曜日の夜に提供もしていた(福利厚生)。
プライベートジェットについては北欧に行くときに20時間かかるのを10時間に短縮できるなど、効果的だった。 - Q7:オアシスの説明にもあったように、コングロマリットディスカウントについて。
時価総額に比べて安いことは歯がゆいと感じている。
長期的には解消されると思っているが、純粋な持株会社ではない面もある。
今後、持株会社への移行も個人的には考えているが、半年や1年のスパンでは考えていない。 - Q8:GMOフィナンシャルホールディングスの役員に熊谷社長が入っていないのはなぜか?
金融はもっとも難しく、監査などでは一週間ほどの時間的拘束などがあるため、スピードが活かせなくなる。 - Q9:クーポンサイトについて、業界全体として陰りを感じているが?
マーケティングの手段として、クーポンによる割引は歴史上正しい。
くまポンは利益を出しているし、お客様にも喜んでいただいている。 - Q10:役員報酬について
ストックインセンティブも考えている。
しかし現在は発行株数を減らす方針(過去の金融事業撤退時の増資分を償却する)を進めており、それに矛盾してしまう。 - Q11:自己資本比率が低いのは?
金融事業により、預り金を負債とする必要があるため。
金融事業を除いたデータについては、IRに問い合わせいただければ回答する。
ちなみにQ2の方は、買収防衛策についてはオアシスに賛成とのことでした。
一方で、Q10の方は熊谷氏のリーダーシップに投資しており、GMOインターネットを個人商店のようなものだと考えていると言っていました。
ワインやプライベートジェットについては一応合理的な説明にも見えますが、ちょっと苦しい言い訳のようにも聞こえました。
お土産
GMOコインの口座に対して、1,000円相当のビットコインをプレゼントする特典でした。
これを機にGMOコインの口座を開設する人も増えそうですね。
所感
これまでGMOインターネットは総会をPRの場として活用してきた印象でしたが、お土産を減らしたり抽選会をなくしたり、ちょっと縮小したような印象を受けました。
今回は株主提案があったことや、予想業績を達成できなかったこともあり、あまり人を集めたくなかったのかもしれません。
株主提案については賛同できる部分もあり、特にGMOインターネットよりもGMOペイメントゲートウェイの時価総額の方が上回っている点については、ずっと気になっていました。
決済事業を手がける会社の親子逆転は、ウェルネットが一高たかはしを完全子会社化した例がありますし、GMOもその流れを辿る可能性は否定できません。
純粋な持株会社になると同時に、買収防衛策を廃止すれば株価は本来あるべき水準になるだろう、と考えている株主は多そうです。
オアシスが翌年も株主提案を行うのかどうかは分かりませんが、GMOの経営陣に対して大きな緊張感を与えたと思います。
また株主提案への賛成比率も思った以上に高く、特に買収防衛策の廃止については賛成が44.77%だったのは正直驚きました。
今年は様子見だった株主もいるでしょうし、翌年は買収防衛策廃止が可決される可能性も十分に考えられます。
あと6%のために買い集める株主も現れるかもしれませんし、今後の動向が気になるところですね。